第1話プロローグ ~ 第10話イーストウッド王国陥落

プロローグ

 

ここは、ある世界のとある大陸にある、若くして領主に就任したある青年の物語である。

この世界では、【ギフト】と呼ばれる生まれ持って持っている力と、
神器(アーティファクト)と呼ばれるアイテムが存在する。

神器は数百年前に、ダンジョンより発掘され、時に神器を使い国が設立が相次ぎ、またそれを奪取しようと戦争が起こってきた

神器の力の方が強力で、権力の持ってる【ギフト】の力が弱いほど神器を追い求め、力に溺れる。

――しかし、神器の力は最初に注いだ魔力を主(あるじ)とし、魔力の波長が近いものしか使えないという欠点があった。

また神器と言えども物であり、コアが消耗し、壊れることもある。

神器がどういった方法で生成されるかは謎とされていた。

そのため、神器の算出元は魔力濃度の濃いダンジョンである。

ひたすら人々はダンジョンへ赴き、神器を得るたびにダンジョンへ行っていた。

ダンジョンには【ダンジョンコア】と呼ばれる宝石が存在する。

幾人の人がダンジョンの最下層に赴き、ダンジョンコアを触れ、神器を生成して行った。

中にはダンジョンコアを持ち帰ろうとした者もいた。

――しかし、ダンジョンコアのある場所は絶妙な魔力バランスにより稼働していた為、持ち帰ったダンジョンコアから神器を製作することは出来なかった。

いつしか、ダンジョンコアから神器を生成しないダンジョンコアも発見されるようになり、神器はダンジョンへ行けば必ず手に入るものでは、無くなっていた。

そもそもダンジョンコアも魔石であることが変わらない為、ダンジョン突破者はダンジョンコアを持ち帰り、いくつものダンジョンコアを失ったダンジョンはそのままダンジョンの役目を終えて行った。

そんな世界である。

——

~~王国歴1120年~~

――ここに畑仕事に精を出す青年が居た。

(今日もいい天気だなー。来年に向けてジャガイモ畑を開拓しとくか)

彼の名前は、【ハルト・フォン・エッグラース】

15歳の時に領主だった父が王都で陛下を守護する親衛隊の仕事をする為に成人したハルトに家督を相続。

現在辺境伯の伯爵という地位についている貴族だ。

親衛隊や王宮の仕事は別に手当と職位が貰えるが、領地にほとんど帰れなくなるとのこと。

殆どのひとは掛け持ちでやらないそうだ。

この国が特殊なのかもしれない。

だが、父と母は王都で悠々自適な生活を楽しんでる。ハルトも同じである。ハルトは現在18歳。

貴族が、ましてや当主がなぜ? 畑を作っているか?

他の領主から見たら疑問が湧くだろう。

この土地は、偉大な勇者を先祖を持つ末裔であるが為、歴代の子孫たちはこの土地を守り続けなければいけないという風習を持っている。

広大な土地を持つが彼自身は領主としては平凡で、これと言って優れたところは無かった。

かと言って特産品があるわけでもなく、寂れているわけではないが、とにかく統治はうまくいっているはずだった。

今日のこの時までは。

「ハルト様―――――!!!」
「ああ、どうした?」

ハルトには【土魔法】の【ギフト】を持っており、その効果もあり、比較的温暖な気候であるこの土地は作物も良く育つ。

ハルトは持ち前のギフト【土魔法】を使い、畑を作っているところだった。

「一大事でございます!」
「ひょっとして、今年の春先に植えた田んぼの稲が枯れたか?」

こんな平凡な辺境の地で一大事なんて、ハルトはたかが知れていると思っていた。

息を切らせて走ってきた老執事がハルトに告げた一大事。
それによりこの生活が終わりを意味をしていた。

「そんなことではございません!」

この老執事の名前はセバス。

この伯爵領に3代に渡って仕えているベテランだ。

ちょっとやそっとの事では慌てないはずなんだが。

そう言うと、セバスは、一枚の手紙らしき紙切れを渡す。

「えーと、なになに………開戦宣言書? …………え?」

表紙を読むと、このお知らせは、今日限りでエッグラース伯爵家滅亡のお知らせだった。

「スカイアロー公爵からの宣戦布告を受けました!」
「はぁ!?」

ハルトは思わず絶句した。

その手紙をめくってみる。

これはいわゆる、戦争はじめますんで、世露四苦! と言われているようなものだった。

スカイアロー公爵家は、イーストウッド王都から見て南方から南東にあるエッグラース家と同じく、勇者を先祖にもつ名門貴族だ。

最も南方にある港町を本拠地に置く為、全く接点が無い。

ハルトは王都に行ったことは無く、当主になってからはまだ他の領主との接点もない。

全く知らない領主から宣戦布告をされる言われはないはずだ。

ちなみにこの領地は王都から見て東方にある国だ。

最も、さらにこの国の東にはまた別の領土がある。

「な、何かの間違いじゃないのか!?」
「使者はもう帰ってしまったのですが、とにかく中をご覧ください!」

ハルトに届いた手紙には一文だけ開戦理由が書いてあった。

みるみるハルトの顔から血の気が引いてくる。

【交易の妨害をしたから】

(な、なんじゃそりゃああああああああああああああ!)

~おしらせ~
最初は毎日投稿したいので区切る所を短めにしてます(^^♪

◆◆

「…………全く身に覚えが無いんだが?」

(え? 俺、なんもしてなくね?)

そもそも、交易をする話は全く知らない。むしろ、今知ったぐらいだ。ハルトは一方的な文面に困惑すらしている。

「大体前提として、交易の妨害なんて力が無いウチに出来るわけないだろ…………」

突然の事態に混乱するハルトだが、なんとなくスカイアロー公爵家を思えばわかる気がしてきた。

海路からの貿易品を王都に送るには自身の領地だけで通るには山越えをしないといけない。

エッグラース家はイーストウッドの中心地にあり、交流が盛んではあるが、南方から王都に向かうだけなら東にある街道を通れば問題ないはずだ。

確かに交通の便を考えると、エッグラース家を通ったほうが楽かもしれないが、他領を通るには関税が掛かる。
更に言えば荷物チェックなどめんどくさい作業がある。

(そうか! 南東の土地から移動するだけならエッグラース家を通ったほうが近いか)

そう、スカイアロー家は最近領土が南東に出来たのだ。

しかも、飛び地になっているため他家を通らないといけないというのも事実。

「………スカイアロー家が南東の領地いくつか合併したから、あいだに居る俺たちが邪魔になったか」

「……さようでございますか」

ちなみに、最近王都の方で異変があり、いくつかの貴族が粛清されたのだ。

位が多少低くても、そもそもが勇者の家系が名門貴族になるわけだから、血筋で納得がいかない連中が多いのも事実だった。

没落した領地は王家直轄地になるのだが、かなり遠方になるのと、いくつか公爵家であるスカイアロー家に割り振られたという話をハルトは聞いていた。

確かに、間に存在してるだけで妨害しているとも言えなくもない、

—-

「…………交易の妨害って、の確かに俺たちの領地があるから通るにしたって大回りしないといけないかもしれないけど」

「公爵にも、いろいろと悪い噂がございますゆえに致し方が無いかもしれませんが…………」

老執事であるセバスにも状況は呑み込めたみたいだ。

(しっかし、どうでもいいとばっちりだよっ!)

スカイアロー公爵家は麻薬や危ない商品を取り扱ってるとの噂も聞く。それが本当ならそもそも王宮が放っておかないと思うんだが。

そうなると、手間を垣間見るに領土が欲しいのは分からなくないが、こっちの都合無視で言われても困る。

「………しかし攻め滅ばされたくなかったら、何かしら譲歩しろって話なんだろうけどさ」

「ハルト様、公爵家はなんと?」

「それが、要求らしいものは何も書いてないんだよね。ただの宣戦布告を知らせる手紙なんだよな」

――そう、手紙には譲歩案などの言葉などが一切ない。

俺たちの条件を飲め、さもなくば、痛い目を見るぞ、と。

どう読んでも直訳するとこう書いてある。

【潔く滅ぼされるがいい】

—-

(なんというか、ひねりもない直球の文面だよ!)

色々ハルトには思うところはあるが、一つ思いついた。

「そうだ、王宮に直訴しよう」

ハルトが言うのは普通の方法だ。謂れのない話で宣戦布告してるんだから真っ当である。

この国の貴族の大半は勇者の祖先という事もあり、国のルールで私闘を禁止している。

出来なくもないが、王家の許可が必要だったはずだ。

「まず王家に手紙を書こう! 阻止王家からの査問役員を読んで公平性を判断してもらえば…………」

(まず、私闘を禁止してるのに攻めてきたこと、折衷案が一切ない事、あとは・・・)

「あの…、ハルト様」

春t路が考え事をしているとセバスが不安そうな顔でこちらを見てくる。

(真っ当な方法で対抗するんだ。俺は悪くないはずだ)

なのにセバスが青い顔をしている。

「大丈夫だ、こっちには非は無い。ちゃんと説明すれば…………」

「違います…………、なんと申し上げればよいやら…………」

ハルトも勇者の家系であり、高度な教育は受けているから大丈夫だと思っている。
何よりも、子孫とはいえ勇者通しが争うのは良しとしない。

セバスは南東の山の方向に指をさして言う。

「………あれは、軍隊では?」
「………は?」

ハルトが軍隊を確認してするのと同時に人が走って来る。

「ハルトさまぁあああああ! 大変です!!!」

警備隊隊長のクラウドが畑にスライディング土下座をするかの如く転がり込んでくる。
そこ! 今耕したばかりの畑なんだが!

「敵が攻めてきました!! 既に回線の狼煙が上がり、その数、――報告によれば、約10万ほどです!!」
「はぁ!! 10万だとぉ!!」

ケチな小競り合いをするつもりはなく、一気に攻め落とすつもりだ。

この領地も一応どうにかかき集めれば5000ほどの兵力があるとはいえ、防衛設備なんてない。
しかも、20倍以上の戦力をどうしろと言うんだ。

ここ数百年外敵要因が無かったことと、王都から近いこともあり、予備兵はいなかった。

むしろ、何かがあれば王都から数万の兵がすぐ出兵できるはずだった為、多くの兵を配備していなかった。

「奇襲戦法かよ!」
「………残念ながら」

クラウドが肩を落としながら言う。

通常ならある程度話し合いがあるはずだ。

何日に開戦するかとか、最低限そういったのがあるべきだ。

お互い戦後処理とかが大変だから、普通は程度を決めて行うはずだ。

しかも使者が来てから30分どころか10分も立ってないんじゃないか?

民間人を逃がす時間もなしとか、あり得ないだろう!

「防衛線は無理です、早くお逃げください!」

クラウドの進言を取り入れて逃げることにした。

…………のだが、どこを間違えたかすでに包囲されており、逃げ道は無かった。

屋敷の地下に秘密の通路の逃げ道があるからそちらから逃げることにした。

クラウドが殿になり、屋敷の前に立つと申し出てくれた。

本当なら立ち向かうべきなのだが、こちら内政ばかりで、武芸に点で自信が無いんだよな。

「ぐっ!」

――しかし、屋敷に入るところを見つかり、一発アイスランスを貰ってしまった。

流石にクラウドと言えども多勢に無勢。そう長くは持ちこたえられない。

このまま逃げても血で居場所をばらしてるようなものだ。

そうお思ったので1階の大広間までやってきて、テーブルクロスをアイスランスを貰った個所に巻き付ける。

(………よし、これで大丈夫のはずだ!)

ハルトは地下室に逃げ、傷が癒されるのを待って逃亡するのだった。

秘密の入り口に向かう途中に足音が聞こえたから完全に包囲されたとみていいだろう。

地下室には先祖である勇者の伝説の防具が収められていた。

故に逃げる前にこれを持ち出さなければいけない、そう考えたので地下室にやってきたのだ。

不思議な鉄球のようなものが収められていた。

先祖代々受け継ぐ神器ではあるが、実はこの鉄球がなぜ神器なのか?全く分からなかったのだ。

まずはこの鉄球を取り、左手に収めた。

そうだ、入り口をふさいで籠城しないと。

――気持ちが落ち着いたところで、入口を隠蔽するための作業を始めた。

目の前の木のドアを壊し、土魔法で同じ石壁で塞ぎ始めた。

現在ハルトがいる部屋は通路の曲がり角にある部屋なので、同じ色の壁で塞げばまず見つかることが無い。

ましてはここは地下室。

こんなところに部屋があるとは外部の人間は分からないだろう。

土魔法を発動させる。

そう、この時左手には、神器である鉄球を持ってることを忘れて。

「………うっ………な………ん……だ………」

その瞬間、鉄球に魔力を吸われる感覚を覚えたが、土魔法が発動されていないにもかかわらず気だるさを覚え、そのまま意識を失った。

――一方その頃。

表では逃げ惑う領民に大群の兵士が襲い掛かっており、何人も惨殺された。

運悪く地下室の真上で敵国の兵士が放った爆裂魔法の爆発のショックで、地下室は崩落してしまいハルトは生き埋めになった。

王国歴1120年9月30日

この日、エッグラース領は、滅亡した。

バットエンドNo.1
ハルト、生き埋めになる

◆王国歴1120年
入り婿として公爵の娘と婚姻していた、イーストウッド第2王子を反逆罪で処刑。
グランドフォート王国よりイーストウッド王国に攻め入り、わずか数日で滅ぼす。
その後、イーストウッド王国が完全に陥落したため、グランドフォート王国より北にあるノーザンテースト帝国は陥落する。

◆王国歴1123年
ノーザンテースト帝国を滅ぼした為、グランドフォート王国は神器を掌握した。
反乱の芽をつぶすため、ギフト持ちの人間を王国に取り入れる。
加入を拒んだギフト持ちは惨殺する【ギフト狩り】が行われる。

◆王国歴1125年
西方・南方の王国に侵略、その後陥落。
グランドフォート王国は大陸統一を果たす。

――この物語は、ここから始まる。

――しかしイーストウッド国である辺境伯が治める領土に関しては未だ落とせず、
数年経過した今でも攻略に難航することになる。

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